2014年 11月 17日
芸術の秋ー国立劇場
寛文年間(一六六一〜七三)に起きた仙台伊達家のお家騒動「伊達騒動」は世間を賑わし、歌舞伎や人形浄瑠璃を始め、講談、小説、映画など様々なジャンルの題材に取り上げられました。その作品群「伊達騒動物」の中の代表作が『伽羅先代萩』です。
今回は、当劇場では初めて、通し狂言として上演します。大名家の跡継ぎを巡って繰り広げられる激しい権力闘争が、歌舞伎らしい見せ場の連続する中で、格調高く、スリリングに展開します。
現行の歌舞伎の『先代萩』は、同じ世界の作品である『伊達競阿国戯場』の一部を取り入れ、舞台を室町時代に設定しています。
「花水橋」では、放蕩に耽る奥州五十四郡の大守・足利頼兼が廓の帰りに悪人たちから襲われますが、力士の絹川谷蔵とともに蹴散らします。
「竹の間」は当劇場では初めての上演。頼兼の隠居後に跡継ぎ となった若君鶴千代を我が子の千松とともに懸命に守る乳人政岡。彼女を追い落とそうと、悪臣・仁木弾正の妹八汐が画策しますが、同じ家中の沖の井や松島に逆にやり込められます。
重厚な義太夫狂言の名場面「御殿(奥殿)」。管領・山名宗全の 奥方栄御前と八汐の若君毒殺計画の犠牲となった千松。その死を眼前にしながら耐える政岡の肚芸と、一人になって初めて我が子の死を嘆くクドキが、大きな見どころです。
「床下」では、忠臣の荒獅子男之助の勇壮な荒事と、古怪な雰囲気漂う仁木の花道の引っ込みが眼目です。
「対決」では悪臣方に有利に評定が進められる所へ、管領の細川勝元が颯爽と現れ、鮮やかに評決を覆します。続く「刃傷」で仁木は、忠臣の渡辺外記左衛門へ刃傷に及び、最後の抵抗を試みます。
藤十郎が当たり役の「御殿」の政岡を勤めます。円熟の至芸をお楽しみください。また梅玉が、頼兼を三十年ぶり、勝元を十八年ぶりに演じます。この他、翫雀の八汐、扇雀の「竹の間」の政岡、橋之助の仁木、彌十郎の男之助・外記、孝太郎の沖の井、さらに東蔵の栄御前など、充実のキャストが揃いました。錦秋にふさわしい珠玉の舞台をお送りします。
行って来ます。